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「エンジニアとしての生き方」
元Microsoftの中島聡氏のブログ、Life is beautiful の人気エントリーを再構成した本。 本の冒頭、氏がWindows3.1用のサードパーティのソフトをWindows95で動くように改造するウルトラCのアイデアのエピソードが載っていて、 その話がいきなり面白いのだが、 中身のメインはそういう裏話より、 技術者としての気構えとか、どうキャリアを考えるかとか、そういう話が多く載っている。 起業を目指してるとか、そこまでじゃなくとも、ちょっと意識のある若い(若くなくても)技術者とか、 新社会人とかが読むといいんじゃないのかね。と思う。 日々の仕事をルーチンワークのようにただこなすだけになってしまった人には、 「価値のある人材になるためには何を学べば良いのか、どんな仕事を経験すれば良いのか、どんな人的ネットワークを築けば良いのかを常に意識し続けて自分のキャリアパスを作っていく必要がある」 という言葉をよく聞いてほしいし、 「どんなに優秀なエンジニアでも、プログラムを自分自身で書かずに良い詳細仕様を作ることは決して出来ない」 には気付かされた。 仕様書を仕様担当が書いてこないのは当たり前なんだ。優秀なエンジニアでさえ書けないものを、優秀かどうか以前にエンジニアでさえない人に書けるはずがない、それを期待していることが間違っていたのだ。 (とここまで書いて、改めてブログを見てみたら、この話が一番人気エントリーだった。やっぱりみんな同じことを思ったんだ。) 中島氏が独立して作った会社UIEは、iPhoneアプリとか作ってるそうで、 2つリリースしたと紹介してたが、2つともしっかり持ってたよ。ううむ。 PR |
『フェイスブック 若き天才の野望』
これはもう黙って読め。 このスピード感だよ。 |
「ファミコンの驚くべき発想力」
入門的技術書。 ファミコンというハードがどんな性能で、どんなことができ、 技術者がどんな工夫を凝らしてゲームを作ってきたのか。 マイコンとかの昔から触ってきた人には目新しいことは無いが、 逆にWindowsしか触ったことの無いような若い人たちは一度読んでおくべき。 かつてのエンジニアはどんな工夫をしてハードの性能を引き出してきたのか。 発想力というのは、ゲームアイデアというより、ハードの性能を引き出す工夫という意味合い。 なぜRPGのパーティは4人なのか。5人並ぶとなぜチラつき始めるのか パレットとスプライトとBG 使える色は13×4で52色 同時に使えるのは3×(4+4)+1で25色 サイクル数を制御して、60分の1秒より細かい時間単位で処理を行う ROMカートリッジの拡張とゼロページ ドルアーガの塔のステージ生成アルゴリズム 知ってる人は知っている。知らない人は知らない。 若い技術者で、この頃の技術を知らないという人はぜひ知っておきたいところ。 たぶんそういう人たちが一番この本を読むべき。 現代のように人間がコンピュータに使われているのでなく、 技術者が間違いなくハードを使いこなしていた時代。 ハードを知り抜き性能を引き出すという経験の有無が、 理解の深さ、個人の技術力の非常に大きな差になっているとすごく思う。 |
「新世界より」
作者は貴志 祐介。 文庫3冊で長いんだけど、あっという間に読めた。 よく練られた世界と、人物像。謎と設定。 現代文明が頽廃した後、わずかに生き残った人類が生きる未来の世界。この辺はナウシカと似てる。 舞台は1000年後の日本。 科学文明は滅び、生き残ったわずかな人類は呪力という超能力を得ていた。 呪力は念動力のことである。周囲のものに力を及ぼし、モノを動かしたり、光を作ったり、飛んでくる矢を止めたり、さらに特に呪力の強い人間は、自分が宙に浮いたりすることができる。 かつては、呪力を覚えた人間と、覚えていない人間の間で大戦争が起こり、呪力を持つ人間が残った。 呪力を持つ人間は、他の人間を殺してはいけない愧死機構が遺伝子に埋め込まれている。人間を殺したことを脳が認識すると、愧死機構が発動し、その人間は心停止して死んでしまう。だから人間は殺人を犯すことができない。 また、突然変異によって業魔と悪鬼という人間が生まれることがある。 業魔は、自身の呪力が周囲に溢れ出し、周りに天変地異を起こす危険な存在。自分でそれを止めることができない。 悪鬼は、愧死機構が働かなくなった人間で、理性が無く周囲の人間を次々と殺していく最も恐ろしい存在。これが現れると必ず大勢の人間が殺されてきた。しかも、普通の人間は愧死機構が働くため、悪鬼を殺すことができない。 人間の住む町の周囲には、バケネズミと呼ばれる種族が生きている。 大きさは人間の子供くらいで、知能は人間と同等程度ある。言語能力も有しており、さらに一部のバケネズミは人語を解する。 バケネズミはコロニーを作って高等な社会生活をしている。戦闘能力もあるが、人間の呪力の前には無力であるため、常に人間の決めたルールの下で生きている。 文庫では上中下3巻構成。 上巻は冒険活劇風。主人公の少女と友人たちが、バケネズミの戦争に巻き込まれる。 中巻下巻は詳しく書かないが、世界の設定を巧みに使ったストーリーが展開される。 この作者のミステリーの中でも最も面白いと評されている。 読んでいると止まらなくなる。 ちなみにタイトルの由来は、ドヴォルザークの「新世界より」から採られている。 ドヴォルザーク:交響曲第8番&第9番「新世界」 前文明の謎や、今の文明の成り立ちに迫っていく感じは、漫画版ナウシカを思い出した。 読んでいて続きが気になる度は「新世界より」のほうが上。 ナウシカはだんだんストーリーやナウシカの考え方についていけなくなるけど、「新世界より」は最後まで読者を引っ張っていってくれる。 |
「日本でいちばん大切にしたい会社」
企業規模も大きいわけではない、業績だって大企業に比べたら全然小さい。 でも、社員や顧客の満足度が高く、世の人や社会のためになる経営に取り組んでいる会社を取り上げた書籍。 著者が中小企業の研究・支援をしているそうで、今まで見てきた企業の中から特に大切にしたいと思う会社5社(+9社)を取り上げている。 知的障害者に働く環境を提供するために採用を続けている会社では、 仕事や設備の方を社員に合わせ、材料と道具を同じ色でそろえたり、目盛りが読めなくても測れるように重りや砂時計を使ったりしている。 会社や工場の敷地に一般の人が入れて、公園や通学路にしている寒天メーカーがあったり、 地元から離れないでやっていっている義肢装具会社や菓子メーカーなどなど。 利益を出すということ以上の使命感があることと、 原因を外のせいにしない、自分の内に求めるということ、 他には無い工夫を凝らしていることが共通点かな。 大型スーパー撤退でシャッター通りになった商店街で、贈り物需要に特化した果物屋。 ぎりぎりの利益だけ残し、あとはヨーロッパから職人を呼び寄せていいものだけを作って徐々に評判をあげていった菓子メーカー。 TVで紹介されたための一時のブームにすぎない、と大量注文を断り続けた寒天メーカー。 社員の通勤時の右折禁止はやり過ぎじゃないかとも思うけど、 地域の人たちをこんなに考えてる会社があるんですねえ。 でも、顧客や社会の前に、まず社員の満足が大事、社員の満足がなければ顧客に満足は与えられない、とも言っており、 そこは同感。 |
「KAGEROU」。
著者は齋藤智裕。水嶋ヒロです。 本の内容そっちのけでなにかと話題になったこの作品。 実際に読んでみると、そのできばえの良さに驚きます。 主人公はビルの屋上で自殺を図る四十男。 そこに現れた謎の人物。 自殺を止めるでもなく、生きろと諭すでもない。 男は自分を、全日本ドナー・レシピエント協会の人間だと名乗る。 ドナーとは臓器提供をする人、レシピエントは提供を受ける人のことであり、両者の橋渡しをする団体だという。 つまり、自殺しようとする人間に声を掛け、自殺の手助けをするとともに、その体を数千万円で買う、その代金は自然な形で遺族に遺すというのである。 ここに2人の奇妙な契約が成立する。 設定の妙からつい先が読みたくなります。 ストーリーは決して目新しいものではありませんが、必要な伏線の張りと回収、無理のない自然なストーリー展開、納得感のある結末と、新人としては非常によくできていると思います。 ストーリーとか全然違うんだけど、「天国の本屋」を思い出します。 本を読んで心温まりたい人には強くおすすめ。 |
「ドラッカーと会計の話をしよう」
最近何かと流行りのドラッカー本。 この本は、会社の会計と利益に焦点を当てて、ストーリー仕立てで噛み砕いて説明しています。 小さなイタリアンレストランを経営している純一。 年商1兆円の小売りチェーンの創業者、西園寺。 成田発ロサンゼルス行きの飛行機で偶然隣に座った2人が、フライトの間に交わす会話。 会社の目的とは何か、利益とは何なのか。 レストランの経営に苦しんでいる純一(と読者)に、西園寺がドラッカーのエッセンスを教える形で話は進みます。 純一の経営するレストランは、黒字であるにもかかわらず、資金繰りに苦しんでいます。 利益とは何なのか。 ドラッカーは、「利益というものは存在しない」と言い切ります。 存在するものは、「儲け」である。 利益と儲けはどう違うのか。 利益とは、その会計年度でむりやり区切って算出した、いわば「作られた数字」です。 会計を学ぶ2年生であれば、誰でも数字をいじることができてしまう。 儲けとは、稼いだ現金、つまり「キャッシュフロー」です。 銀行口座にどれだけの現金が入っているか、ということです。 また、どこの会社でも心当たりのあるようなことが書いてあります。 -- 売り上げが下がったからといって、トイレの石けんを買うのをやめたりしてはいけない。 好況だから予算を増額、不況だから減額というような場当たり的なことをするのではなく、 しっかりとしたマネジメントの判断で決定すべきである。 -- ほかにも興味深い事実がたくさん語られています。 もっともよい10%の商品が、全体の90%の売り上げを占めている。 逆に、90%のコストは、価値をうまない90%の活動に使われている。 管理可能な支出を増やすこと。 費用と資産は同じものであること。 キャッシュフローは未来を見ている。 利益は、過去を表しているにすぎない。 しかし、もっとも大事なのは以下ではないでしょうか。 -- 利益は、顧客が製品を受け入れた時点で発生する。 消費者へのアフターサービスまで含めて、製品のコストとして捉えるべきである。 消費者が、その製品のコストをすべて負担している。 製品の値段は、コストでなく顧客が払えると考える値段に依って決まる。 -- 大事なのは、会計には現れない、顧客の視点だというのです。 |
『チア男子!!』
作者は現役早稲田大学生、朝井リョウ。 性格も目的も違う男子大学生たちが、チアリーディング部を作って全国大会を目指します。 話はメンバーを集めるところから始まります。 ずいぶん簡単に集まるなあと思いますが、そこはご愛嬌。 チアのメンバーは最終的に16人になるのですが、全員のキャラがしっかり立っているのがすごい。読んでいてメンバーの練習風景の情景が眼の前に浮かぶようです。 それぞれのキャラクターやストーリーは決して目新しいものではありませんが、 全体としてきれいにまとまっており、読後感も非常にさわやか。 特に最後の章、全国大会の演技と、試合前最後のミーティングと2つの場面を交互に描いていく場面は、そのまま映画にできるような巧さです。 男子チアリーディングというのは実際にあり、早稲田大学にもチームがあります。 作者はそのチームをモデルにして作品を書いた訳ですが、逆にこの作品を読んだチームメンバーが作品の登場人物に励まされたといいます。 |